教授 二井 進
専門は「空間造形に関する技法と制作」です。デザインやものづくりの際のプロセス、そして平面・立体・空間それぞれの表現の関係などを研究しています。1年次には、基礎デザイン概論や基礎デザイン演習、平面デザイン演習でお会いします。
演習の授業で「自由に作っていい」と言われて、戸惑ってしまう人を見かけます。なぜでしょう。それは、素材がないからです。素材がつまった引き出しをたくさん持っていないこと、つまり自分の中に自由に選べるだけの情報や知識がないこと、それが「不自由」な状態を生んでいるのです。将来ものづくりや空間デザインをするなら、自由に表現できるようにたくさんの引き出しを身につけて欲しい。そのためのプログラムが、創生デザイン学科には用意されています。
例えば、デッサンをする。描いたものを単純化する。単純化したものをデザイン化する。デザイン化したもので平面を構成する。平面構成を粘土のレリーフにしてみる。レリーフから石膏の壁を作る――。こうしたプロセスをたくさん経験してもらいます。平面から立体へ、そして空間へと表現の幅を広げていくのです。この過程で、様々な材料に触れること、実はこれが、引き出しを増やすことにつながる、重要な要素なのです。私はよく「頭で考えるな、手で考えろ」と言います。学生には手で触れることによって、ものづくりを楽しんで欲しいと思います。材料の硬さや柔らかさ、テクスチャなどを、皮膚感覚でリアルに理解して欲しいのです。
新入生には絵の好きな学生もいますが、「デッサンはやったことがない」「理系だから美術はあまり......」と不安そうな顔をする学生も大勢います。しかし技術は訓練すれば身につくもの。今、上手かどうかよりも、何かを「作りたい!」という気持ちのほうが大切ですね。小学生の頃、粘土や段ボールで工作したこと。触れて、作って、遊んだこと。自分の考えたものが形になること。この楽しさを思い出して欲しい。創生デザイン学科には、公募展やコンペティションに出品し、入選・受賞する先輩がたくさんいます。楽しみながら作り続ければ、応用力もつき、結果が出せるようになるのです。
このように、デザインや造形などの美的要素を工学部の中で養えるのが、創生デザイン学科の強みです。アートを学んだ。人間工学やコンピュータなどテクノロジーを身につけた。制作プロセスを体験した――そういう人は強い。「作るための方法論」を知っているからです。コンセプトを形にして表現するときも、感覚だけに頼りません。たくさんの引き出しから必要なものを選び出し、それを適切に扱って、狙ったとおりの印象を与えることができるのです。これが、制作をディレクションする「基礎体力」。身につけると、卒業後に活躍できるフィールドも広がります。